房総オリーブのはじまり
房総半島台風をこえて
2019年9月10日16時、冨浦インターを降りると、館山バイパスの信号が消えていた。車窓から見える建物は、屋根が壊れ、外壁に瓦が突き刺さり、窓が割れている、電柱は傾き、電線が垂れ下がっている。行き交う車もなく、人通りもない。静寂の中、台風の爪痕が西日にさらされていた。
その日の朝、台風のニュースを観て冨浦の知人に電話をすると、「怪我はない。屋根が壊れた。充電がなくなる」と電話が切られた。「行かねば」。車に、車載充電器、水、パン、菓子、電池、ラジオ、身体拭き、布団などを積んでやってきたのだった。
南房総市富浦町多田良の西海岸は、私にとって癒しの場だった。地元のシニアたちが、浜の焚火に三々五々集まり、ゆるく話しながらおだやかな時間を共有する。浦安にいる知人に連れられて来たのがきっかけで、その輪に時折混ぜてもらっていた。台風15号の上陸は、親戚が被害を受けたのに等しかった。
台風の後しばらくすると、冨浦に次々空き地ができた。壊れた住居を取り壊し、移住する人も多いと聞いた。出ていく人も残る人も皆肩を落としていた。
ある日、浜の焚火の80代の常連から、「耕作していない農地を活用できないか」と相談があった。「家庭菜園でもやれば?」そんな軽い話だったと思う。当時、私は、君津市で房総半島をアジア一のオリーブ産地にすることを目指した、取引先の新事業のブランディングを担当していた。その時、私のバッグには「オリーブ農園経営セミナー」のチラシの校正刷りが入っていた。「そうか、私がやればいいのか。皆が終わりにしたり去ったりしているときに、新しいことを始めるために参入すれば、地元の人を元気づけられるかもしれない」。こうして、地元シニアを巻き込んだ、オリーブ農園事業がスタートした。

房総オリーブ概要
循環産業である果樹栽培で、過疎化・高齢化する農業、地方都市の社会的課題を軽減

- 耕作放棄地の再生面積:約3,400坪
- 定植オリーブの本数:1,430本
- 農園の数 :第1~第6
:農地改良中 1
:枇杷農園 1
:公園予定地 1 - ボランティア参加者:延べ260人
あゆみ
2020年 | |
4月10日 | 第一農園 土壌改良 現地は、もともと田んぼで、その後盛り土をして、嵩上げし、一時畑として賃貸。 この数年は、何も栽培されていない。周辺農地も同様の状況。 樹木医による土壌診断の結果、粘土質でガラも多く、PHをあげる必要があるとのこと。 厳しい土地の方が、可能性を調査するのに適していると判断し、定植を決断。 |
5月15日 | 150本のトルコ産・ゲムリックオリーブを定植 |
7月16日 | 第一回剪定 葉落ちした樹木数本を確認 |
8月15日 | 葉落ちしていた樹木から新芽の発芽を確認。農園拡張推進へ |
8月24日 | 南房総市役所訪問 副市長に房総オリーブプロジェクトをご説明 |
9月21日 | 第二、第三農園の土壌改良、第一農園の追肥 商標登録完了 房総オリーブ(登録6297445号)、房総レモン(登録6297446号) |
10月25日 | 第三農園に360本定植 第一農園の150本を第二農園に移植 第二農園に8本、第三農園に17本追加定植 富浦町多田良561の空き家を拠点として賃貸契約(2021年1月より) |
11月7日 | 君津市長 石井ひろ子さま視察に来訪 |
11月29日 | 第四農園候補地(富浦町深名)に試験栽培開始 |
12月21日 | 南房総市役所農政課に就農相談 |
2021年 | |
2月5日 | 農地所有適格法人 合同会社房総オリーブ 設立 |
6月 | 第四農園に313本定植 |
10月 | 第二農園拡張 138本定植 第四農園に50本定植 第五農園に220本定植 |
2022年 | |
4月 | 第一農園に190本定植 |
11月 | 第六農園に60本定植 |















